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感染対策のススメ

PPEのススメ

PPEに関するQ&A

個人防護具(PPE)に関する皆様の疑問にお答えします。

一度着用したガウンは、眼で見て汚れていなくても表面が微生物に汚染されていたり機能が劣化している可能性があります1),2),3)。また、再度着用する際に汚染部分に触れてしまうなど十分な防御機能を果たさない可能性があります3)。一度使用したガウンは使い回さず、毎回新品のものを着用してください。

参考
  1. Morgan DJ, et al. Frequent multidrug-resistant Acinetobacter baumannii contamination of gloves, gowns, and hands of healthcare workers.  Infect Control Hosp Epidemiol. 31(7):716-721, 2010
  2. Snyder GM, et al. Detection of methicillin-resistant Staphylococcus aureus and vancomycin-resistant enterococci on the gowns and gloves of healthcare workers. Infect Control Hosp Epidemiol. 29
    (7):583-589, 2008
  3. 廣瀬千也子監修, 大友陽子, 一木薫編集. 感染管理QUESTION BOX2標準予防策と感染経路別予防策. 中山書店(東京), 2005

手袋の上から手洗いや消毒薬による擦り込みを行っても完全に微生物を除去することができない可能性があります1)。さらに、一度使用した手袋のピンホールの発生率は未使用の手袋より高いため2)、患者と医療従事者を守るという手袋としての役割を果たすことができません。以上の理由から、一度使用した手袋は再使用せず廃棄し、毎回新しい手袋を使用してください。

参考
  1. Bradly ND, et al. Removal of nosocomial pathogens from the contaminated glove -Implications for glove reuse and handwashing-. Annals of Internal Medicine. 394-398, 1988
  2. Adams D, et al. A clinical evaluation of glove washing and re-use in dental practice. J Hosp Infect. 20:153-162, 1992

白衣やユニフォームは、患者や環境中の微生物によって汚染されています1)。特に袖口やポケットからは、黄色ブドウ球菌やアシネトバクターなどが頻繁に分離されます2)。マスクや手袋をポケットなどに入れると微生物で汚染され、個人防護具としての機能を果たさなくなります。マスクや手袋は、使用時に箱から取り出した新品のものを使用しましょう。

参考
  1. Treakle AM, et al. Bacterial contamination of health care workers' white coats. Am J Infect control 37(2):101-105, 2009
  2. これで解決!臨床のなぜ?Q&A(1). 照林社, 2007

血管のルート確保や採血行為は血液曝露の可能性が高い処置のため、医療従事者の感染リスクを減少させるためにも手袋は必須です。正常な皮膚であれば皮膚本来のバリア機能により血液曝露による感染回避も可能ですが、医療従事者は手荒れしていることが多く、正常な皮膚であるとは言い切れません。また、これらの処置は患者の正常皮膚に創をつける侵襲的な処置のため、医療従事者の手指の微生物が患者に伝播するリスクを減少させるためにも手袋は必須です。両手ともに手袋を着用して処置を行うようにしてください。
手袋着用の遵守率を上げるために、手にフィットする作業性の良い手袋を選ぶ、円滑に処置ができるように練習するなどの工夫が必要です1)

手袋を着用して採血を行うための工夫
  • 手袋を着用してルート確保・採血練習を行う
  • 業務を行いやすい手袋を選択する
  • 自分に合ったサイズの手袋を選択する
  • 止血テープなど必要な物品は事前に準備し、作業しやすい環境を整える
コラム ~手袋で針刺し事故時の感染リスクを低減~

手袋は湿性生体物質から身を守るものですが、破損していては本来の防御機能を果たせません。では、針刺しにより手袋が破損してしまった場合はどうでしょうか?
手袋を着用することで、血液の伝播量を52%減少させることができるという報告があります2)。つまり、手袋は表面的な湿性生体物質の防御だけでなく、針刺し事故の際にも感染リスクを減少させることができるということです。
なお、安全装置が付いている注射器も多く販売されていますが、それだけでは針刺し事故をゼロにすることはできません3)。「万が一」の時、自分自身を守るためにも、採血など注射器を取り扱う際には手袋は必須です。

参考
  1. 岡田淳子他. 採血時手袋装着率向上のための有効策の検討. 環境感染 23(4):267-272, 2008
  2. R. Krikorian, et al. Standardization of needlestick injury and evaluation of a novel virus-inhibiting protective glove. J Hosp Infect 66(4):339-345, 2007
  3. 坂本史衣. 安全装置付き鋭利器材の針刺し発生率への影響. 環境感染 24(2):100-104, 2009

結核患者さんが室外を移動する際には、呼吸器分泌物の拡散を防ぐためにサージカルマスクを着用してもらいます1)。これにより、飛沫核の空気中への排出を低減します。なお、結核患者さんの咳やくしゃみの飛沫に曝露しても感染することはほとんどありません2)
一方、医療従事者や面会の方はN95マスクを着用し、結核の飛沫核を吸入しないように防御します。

参考
  1. CDC. Guidelines for preventing the transmission of >Mycobacterium tuberculosis in health-care settings, 2005 http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/rr5417a1.htm
  2. 国立病院機構大阪医療センター感染対策委員会,ICHG研究会編集. 新院内感染予防対策ハンドブック. 南江堂, 2006

汚染が胸部、腹部など体幹部に限定できる飛散のリスクが少ない処置ではエプロンを、汚染が広範囲におよぶ処置ではガウンを選択します1)

例)
エプロン 気管内吸引、排泄物の処理、透析患者のシャント交換など
ガウン 救急や産科など広範囲の血液・体液の飛散リスクが予想される処置、器材の洗浄・消毒、接触感染の可能性がある患者の処置(角化型疥癬、ノロウイルス)など
参考
  1. 藤田 烈.PPE(個人防護具)の種類と選び方.HosCom 5(1) :1-6, 2008

2002年に発行された「医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン1)」では、手袋を外した後の手指衛生の必要性については勧告されていますが、手袋を着用する前の手指衛生については言及されていません。しかし、手袋は手指衛生の代替にはならないことや、患者さんのケアの前には手指衛生を行う必要があることからも、「処置前の手指衛生」として手袋着用前に手指衛生を行う必要があると考えられます。なお、上記ガイドラインでは、中心静脈カテーテルの挿入時など滅菌手袋を着用する前については、手指衛生を行うことが勧告されています。

参考
  1. CDC : Guideline for hand hygiene in health-care settings centers for disease control and prevention,2002 http://www.cdc.gov/handhygiene/Guidelines.html

作業中に破れてしまったり、中まで染み込むほどの汚染を受けた場合には、可能な限り速やかに作業を中断し、個人防護具を交換します1)。脱ぐ際には、着用者が汚染を受けないよう汚染範囲を包み込む要領で脱ぎます。また、汚染された可能性のある衣類や体の部分は、十分に洗浄し汚染を除去します。

参考
  1. 廣瀬千也子監修, 大友陽子, 一木薫編集. 感染管理QUESTION BOX2標準予防策と感染経路別予防策. 中山書店(東京), 2005

外部刺激を遮断するために手袋を使用することは、手荒れを回避するために非常に有用な手段です。ただし、手袋の種類によってはアレルギーや接触性皮膚炎を引き起こす可能性がありますので1) 、パウダーフリーなど低刺激性の手袋を選択しましょう2)
また、手袋の劣化や患者への感染の伝播を考慮し、手袋を着用している場合でも、処置ごとに交換するなど、基本的な感染対策は実施しましょう。

コラム ~手荒れと感染リスク~

高度の手荒れを有する手肌は、角層のバリア機能がほとんど失われています。そのため、手指衛生用品がしみて手指衛生を実施しなくなったり、病原微生物への曝露のリスクが高くなるなどの問題が生じます。さらに、荒れている手は黄色ブドウ球菌などの病原微生物が定着している確率が健常人の手に比べて高く、患者への感染リスクを増加させる危険性があります3)
これらの問題を回避するためにも、日常的にハンドケアを行い手荒れを事前に回避することも重要な感染対策であると考えられます。CDCのガイドラインの中でもハンドケアの重要性について述べられています。

手指衛生のためのCDCガイドライン4)より

スキンケア
  • 手指消毒や手洗いによる刺激性接触皮膚炎の発症を最低限に抑えるため、ハンドローションやクリームを医療従事者に提供する。(カテゴリーIA)
  • ハンドローション、クリーム、アルコールベースの手指消毒薬が病院で使用している抗菌石けんの持続活性に与える影響について、メーカーに問い合わせる。(カテゴリーIB)
参考
  1. 西岡和恵他. 塩化ビニル手袋によるアレルギー性接触皮膚炎の4例における原因成分の究明. 日皮会誌, 118(10):1967-1976, 2008
  2. 古橋正吉他. 手術用ゴム手袋等による皮膚刺激と対策. 手術部医学, 13(4):491-494, 1992
  3. Larson EL, et al. Changes in bacterial flora associated with skin damage on hands of health care personnel. Am J Infect Control, 26:513-521, 1998
  4. CDC : Guideline for hand hygiene in health-care settings centers for disease control and prevention, 2002
    http://www.cdc.gov/handhygiene/Guidelines.html

医療現場で使用される手袋は素材によってラテックス手袋、ニトリル手袋、プラスチック手袋などに分けられます。最もよく使用されているのは天然ゴムラテックスでできたラテックス手袋で、使用感も良く比較的安価です。しかし、ラテックスによるアレルギーが問題となっています。その代替品として合成ゴムでできたニトリル手袋が使用されることが多くなってきています。ニトリル手袋は、耐久性に優れ、薬品の取り扱いなどにも適しています。プラスチック手袋は安価ですが伸張性や耐久性が他の素材に対して乏しいため、精密性を要する作業を行うには不適です。素材によって使用感や耐久性、価格などが異なるため、使用する場面に応じて選択してください。

医療施設でよく使用される手袋の材質別特徴
  ラテックス ニトリル プラスチック
素材 天然ラテックスゴム 合成ゴム 塩化ビニール樹脂
使用感 ×
伸縮性 ×
耐久性 ×
価格

ラテックスアレルギーとは、手袋やカテーテルなどに含まれる天然ゴムラテックス蛋白に感作されて起こるアレルギーの一種です。ラテックス蛋白を含む手袋やその他ラテックスを含む器材に接触すると、蕁麻疹や喘息様発作、アナフィラキシーショックなどの症状が起こります1)。一度ラテックスアレルギーを発症すると、バナナやキウイなどの果物と交差反応を起こし、ラテックス蛋白に接触したときと同様の症状が起こることがあるなど、日常生活でも様々な問題が伴います。近年、感染対策が重要視され、手袋の使用頻度が高くなったため、医療従事者の罹患率が上昇し、問題となっています。
ラテックス蛋白に感作されてしまった場合、対策としては原因物質の回避しかありません。ニトリル手袋などのラテックス蛋白を含まない手袋を使用することで過敏症が改善することがあります。

参考
  1. 日本ラテックスアレルギー研究会.  http://www.latex.jp/latexallergy.html