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インフルエンザ

インフルエンザとは

 インフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症で、重くなりやすい疾患です1,2)。季節性インフルエンザは流行性があり、日本では例年12月頃から翌3月頃にかけて流行します。
 インフルエンザウイルスはウイルス粒子内の核蛋白複合体の抗原性の違いから、A・B・C・Dの4型に分けられ、このうちヒトで流行的な広がりを見せるのはA型とB型です3)。A型とB型のインフルエンザウイルスの粒子表面にはHA(ヘマグルチニン)とNA(ノイラミニダーゼ)という糖蛋白があり、HAはウイルスの宿主細胞への吸着・侵入に、NAは宿主細胞内で増殖したウイルスが遊離するために必須で、A型インフルエンザウイルスのHAは18種類、NAは11種類の亜型があります4)。この亜型が様々な組み合わせで、ヒトだけでなく他の宿主(ブタ、トリなど)にも広く分布しているため、A型インフルエンザは人獣共通感染症としてとらえられます5)

  • 図 インフルエンザウイルスの構造

 A型とB型のインフルエンザウイルスは、その原因となるインフルエンザウイルスの抗原性が小さく変化(連続変異)しながら毎年世界中で流行しています3,6)。これが季節性インフルエンザです。一方、A型インフルエンザウイルスは時としてこの抗原性が大きく変化し(不連続変異)、これまで流行していたウイルスとは異なるインフルエンザウイルスが現れます。これが新型インフルエンザです。新型のインフルエンザウイルスに対しては、多くの人が免疫を獲得していないため、感染は世界的に拡大し、大流行(パンデミック)となる可能性があります2,3)

臨床症状

 38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です1-3,7)。併せて普通の風邪と同じように、喉の痛み、鼻水、咳等の症状も見られます。小児ではまれに急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している人では細菌による肺炎を伴う等、重症化することがあります。一般的に、インフルエンザ発症前日から発症後3~7日間は鼻や喉からウイルスを排出するといわれています2,3)。排出されるウイルス量は解熱とともに減少しますが、解熱後もウイルスを排出するとされています3)

表 インフルエンザの特徴1-4,7)
流行時期 例年12月~3月頃
潜伏期間 平均2日(1~4日)
症状 38℃以上の発熱、頭痛、呼吸器症状、筋肉痛、消化器症状、関節痛、全身倦怠感、腰痛など
※普通の風邪と比べて全身症状が強いことが特徴
 症状のみで新型コロナウイルス感染症との鑑別は困難
感染期間 発症1日前~3日目をピークとし7日目頃まで
経過 約1週間で快方に向かう
感染経路

 インフルエンザウイルスの感染経路は、感染者の咳やくしゃみの際に発生する飛沫を吸い込む、もしくは飛沫で汚染された環境表面や物品に触れた手指を介する感染といわれています2,3)

治療法

 インフルエンザに対する治療法として、抗インフルエンザウイルス薬の投与があります。ただし、効果はインフルエンザの症状が出始めてからの時間や病状によって異なり、抗インフルエンザ薬の投与は全ての患者に対しては必須ではありません3)。したがって、使用する・しないは医師の慎重な判断に基づきます2,3)。抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、鼻やのどからのウイルス排出量も減少します3)。なお、症状が出てから2日(48時間)以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できません。

感染対策

 インフルエンザ予防方法の一つとして、流行前のワクチン接種があります2,3)。現行のインフルエンザワクチンは、インフルエンザの発症予防や、発症後の重症化、死亡リスク軽減に一定の効果があるとされています2)。国内の研究では、65歳以上の高齢者福祉施設の入所者に対して、34~55%の発症を防ぎ、82%の死亡を防ぐ効果があったと報告されています8)
 さらに、医療関係者のワクチン接種については、日本環境感染学会「医療関係者のためのワクチンガイドライン」の中で、接種不適当者に該当する場合を除き、全医療関係者が毎年1回、ワクチンを接種することが推奨されています9)。医療関係者のワクチン接種は、自己の感染予防だけでなく、接種ができない患者の罹患や合併症リスクを低減させること、そして勤務可能な医療関係者の減少を抑えることにもつながります。ワクチン接種の効果は、シーズンや亜型によって大きく異なりますが、接種した集団の発症率は、接種しない集団の発症率と比較して60%程度抑えられると考えられています。
 また、インフルエンザの予防方法として、抗インフルエンザ薬の予防投与があります。日本感染症学会提言2012「インフルエンザ病院内感染対策の考え方について(高齢者施設も含めて)」の中で、インフルエンザ感染者が院内で発生した際は、感染者に接触した入院患者に対して、承諾を得たうえでの抗インフルエンザ薬予防投与が推奨されています10)。さらに、抗原変異が予測されるようなシーズンや抗原変異が確認されたシーズンでは、ワクチンの効果が低下する事が考えられるため、患者だけでなく、医師や看護師も予防投与が必要になる場合もあるとしています。
 インフルエンザの予防には、マスクを含む個人防護具の着用や手指衛生の実施も有効です2,3,11)。インフルエンザの主な感染経路は、感染者の咳やくしゃみの際に発生する飛沫のため、感染者と接する際はサージカルマスクを着用し、感染者に対しては個室隔離(個室の隔離が難しい場合はインフルエンザ感染者を一つの病室に集めるコホート隔離の実施)や、感染性を有する時期の外出制限をするなど、飛沫予防策を実施します12)
 インフルエンザウイルスはエンベロープを有しており、消毒薬に対する抵抗性は低いです13)。エンベロープウイルスの消毒には、低水準消毒薬以上が有効です。低水準消毒薬である第四級アンモニウム塩や両性界面活性剤、あるいは中水準消毒薬のアルコールなどを用いて消毒します。



2026年1月8日