学術情報

文献紹介

手指衛生

Train-the-Trainers in hand hygiene facilitate the implementation of the WHO hand hygiene multimodal improvement strategy in Japan: evidence for the role of local trainers, adaptation, and sustainability

著者
Hiroki Saito,  Koh Okamoto, et al.
出典
Antimicrobial Resistance & Infection Control, 12, Article number: 56, 2023

キーワード:手指衛生、遵守率、TTT、WHO、使用量増加、教育

Professor Pittetらによる第1回目のTTT開催以降、第1回目の参加者が第2回・第3回目のトレーナーとなりTTT Japanを開催している。
WHOが作成した評価ツールであるHHSAFをTTT-Japanトレーナーの施設に適用し、トレーナーの関与前後の結果を比較した調査研究である。3回のTTTコースに参加した日本の医療従事者は158名で、その大半(131名、82.9%)は看護師だった。2回目、3回目のTTTには27名の現地トレーナーが参加した。結果として、受講前と受講後の評価のスコアは、受講後に向上し(P<0.001)、その向上は3回のTTTすべてで一貫していた。コース終了後の満足度調査では、90%以上の参加者が「コースは期待通りだった」、「コースで学んだ事は自分の実践に役立つ」と回答した。トレーナーの意識と実践に関する調査では、4分の3以上(76.9%)のトレーナーが「トレーナーとしての経験が、自施設での実践にプラスの影響を与えた」と回答した。また、「参加者の所属する医療機関において手指衛生の改善」が見られた。

       

Hand hygiene compliance in the critical care setting: A comparative study of 2 different alcohol handrub formulations

著者
Marra AR, Camargo TZ, et al.
出典
Am J Infect Control, 41(2): 136-139, 2013

キーワード:手指衛生、遵守率、形状の違い、アルコールジェル、アルコールフォーム、泡状、ICU

手指衛生の遵守率は利便性や製剤の形状に影響を受ける可能性があり、形状に関する調査をしている。
16週間にわたり、アルコール手指消毒剤(ジェル状および泡状)およびクロルヘキシジン石鹸(液状)を用いた手指衛生の遵守率を比較した。その結果、全体の手指衛生の機会は3,895回、遵守率は36.9%であった。アルコール手指消毒剤では形状の違いによる遵守率(ジェル剤:31.8%、泡状:31.3%)に優位差は見られなかった。このことから、医療従事者は容易に利用できる環境であればアルコール手指消毒剤の形状に関わらずどんな製品でも使用することが示唆された。

Comparison of strategies to reduce meticillin-resident Staphylococcus aureus rates in surgical patients: a controlled multicentre intervention trial

著者
Lee AS, Cooper BS, et al.
出典
BMJ Open, 3(9): e003126, 2013.

キーワード:MRSA感染率、手指衛生、感染対策方法の検討

MRSAに対する戦略(1.手指衛生促進活動の強化、2.MRSA保菌者に対する MRSAスクリーニングおよび接触感染予防策と薬剤による除菌)を、ヨーロッパとイスラエルの10病院、33の外科病棟で、単独もしくは両方を1年間実施し比較検討した。単独の場合はMRSA感染率に著変はなく、両方行った場合は臨床培養における感染が1ヶ月当たり12%減少していた。また、クリーンルームの外科病棟(例:心臓胸部外科、整形外科)では、戦略2.が臨床培養とMRSA感染の減少に関連していた。MRSA罹患率の低い外科病棟では、MRSA感染率を減少させるには基本的な感染対策とMRSA特有の感染対策の組み合わせが必要であった。

処方を改良した世界保健機構の手指消毒剤は術前手術時手指消毒のための欧州における有効性の必要条件を満たすModified World Health Organization hand rub formulations comply with European efficacy requirements for preoperative surgical hand preparations

著者
Suchomel M, Kundi M, Pittet D, Rotter M
出典
Infect Control Hosp Epidemiol, 34(3): 245-250, 2013

キーワード:WHO、手術時手指消毒、EN12791、グリセロール、アルコール

世界保健機構(WHO)は、"医療現場における手指衛生のためのガイドライン"の中で市販品の手指消毒剤がない、または高価なため入手できない医療施設が手指消毒剤を現地生産するために、80v/v%エタノールまたは75v/v%イソプロパノールをベースとした2つの手指消毒剤の処方を推奨している。先の研究では、どちらの処方においても手術時手指消毒剤のもっとも厳しい基準である欧州規格EN12791の有効性の必要条件を満たさなかった。また、アルコール濃度を約5%高めた変更処方においても消毒後3時間の測定で必要条件を満たさなかった。
そこで、高いグリセロール濃度が消毒効果に悪い影響を及ぼすと考え、アルコール濃度を約5%高め、グリセロールの濃度を1.45%から0.725%へ低くした処方またはグリセロールを含まない処方に変更した。変更した処方において消毒時間5分間でEN12791の有効性の必要条件を満たすか評価した。
結果、両方の改良処方の条件において対照薬に対して劣っておらず、EN12791の有効性の必要条件を満たした。

免責事項:本内容に関する文責はサラヤ株式会社にあります。

ICHE (Infection Control and Hospital Epidemiology)の文献を紹介することは、ICHEの編集者、the Society for Healthcare Epidemiology of America、the University of Chicago Pressがサラヤ株式会社の製品、サービス、業務内容を支持するということを意味するわけではありません。

Testing the WHO Hand Hygiene Self-Assessment Framework for usability and reliability

著者
Stewardson AJ, Pittet D, et al.
出典
J Hosp Infect, 83(1): 30-35, 2013

キーワード:手指衛生、WHO、自己評価フレームワーク、有用性、信頼性

WHOの手指衛生自己評価フレームワークの有用性と信頼性を確認するために、草稿段階において有用性に関するプリテスト(19カ国の26施設が回答)と信頼性テスト(16カ国の41施設が回答)を行っている。有用性に関しては、21/26施設が2時間以内でテストを完了し、23/26施設が「使用しやすい」、24/26施設が「有用である」と回答している。信頼性テストでは、評価項目27個のうち7個の信頼性が低いことがわかり、適切に修正されている。この調査により医療施設における手指衛生促進に対するWHOの手指衛生自己評価フレームワークの有用性と信頼性が確認された。

Compliance of health care workers with hand hygiene practices: independent advantages of overt and covert observers

著者
Pan SC, Tien KL, et al.
出典
PLOS ONE, 8(1): e53746, 2013

キーワード:手指衛生、遵守率、バイアス、観察者の役割

手指衛生遵守の評価におけるホーソン効果を考慮し、WHOの勧める周囲からも観察者であることが分かる公認の観察者(ICN、病棟の手指衛生大使)に加え、被観察者へのバイアスがかかりにくく周囲からは観察者であると分からない影の観察者(医学生)を、1年間の院内全体の手指衛生プログラムに参加させた。影の観察者測定分は公認の観察者測定分と比べ、手指衛生遵守率が有意に低かった。ICNや病棟の手指衛生大使は指導や直接的なフィードバックなどを行い、陰の観察者はバイアスやホーソン効果などの影響のない遵守率の測定とフィードバックを行うという役割が示唆された。

Prospective observational study to assess hand skin condition after application of alcohol-based hand rub solutions

著者
Ahmed-Lecheheb D, Cunat L, Hartemann P, Hautemaniere A
出典
Am J Infect Control, 40(2): 160-164, 2012

キーワード:擦式アルコール製剤、皮膚状態、皮膚炎、乾燥、かゆみ、発疹

擦式アルコール製剤使用後の医療従事者の皮膚状態と皮膚耐性の評価およびアンケート調査を実施している。対象は23-58歳(平均40歳)の医療従事者231人で、アンケートの結果、93%が擦式アルコール製剤の使用に肯定的であった。手指のpHと表面の皮脂値はわずかに減少したが皮膚保護機能に影響はなく、減少値も生理学の範囲内であった。

Hand disinfection in a neonatal intensive care unit: continuous electronic monitoring over a one-year period

著者
Helder OK, van Goudoever JB, et al.
出典
BMC Infect Dis, 12(248), 2012

キーワード:手指衛生、モニタリング、無線集計システム、電子機器、ディスペンサー、NICU

オランダの大学病院のNICUにおいて、無線集計システム搭載の自動カウンター付ディスペンサーをベッドサイド27箇所に設置して、手指衛生コンプライアンスを1年間調査している。その結果、手指衛生258,436回分が記録された。手指衛生回数の平均値は、医療従事者1人当たりで15.9回/日、1患者日当たりで27.6回であった。このような無線集計システムを用いたモニタリングは直接観察データの補助となる有用なデータを提供することがわかった。

Skin care education and individual counselling versus treatment as usual in healthcare workers with hand eczema: randomised clinical trial

著者
Ibler KS, Jemec GBE, et al.
出典
BMJ, 345: e7822, 2012

キーワード:手荒れ、スキンケア、皮膚保護行動、教育、手指衛生

過去1年間で手湿疹を経験した医療従事者を対象に、職場と家庭でのアレルゲン曝露に対するスキンケア教育と個別カウンセリングに基づく簡単な手湿疹二次予防プログラムによる介入を実施している。介入群には医師によるスキンケア教育(使用水の水温、ペーパータオルを用いた拭き方、手に汚染がない場合の手指消毒、保湿剤使用、手袋着用等の皮膚保護指導)が行われた。介入群は、対照群(通常の対応)と比較して自己評価による手湿疹の重症度が低く、教育された皮膚保護行動を実践していた。

Evaluation of the national Cleanyourhands campaign to reduce Staphylococcus aureus bacteraemia and Clostridium difficile infection in hospitals in England and Wales by improved hand hygiene: four year, prospective, ecological, interrupted time series study

著者
Stone SP, Fuller C et al.
出典
BMJ, 344: e3005, 2012

キーワード:手指衛生、キャンペーン、MRSA、クロストリジウム・ディフィシル、感染率

手指衛生キャンペーンが手指衛生材料調達量に与える影響と、手指衛生材料調達量のMRSA/MSSA菌血症およびクロストリジウム・ディフィシル感染症との関係について調査している。調査はイングランドとウェールズにおける計187の急性期トラストを対象として、2004年7月~2008年6月に実施した。手指衛生キャンペーンにより手指衛生材料の調達量は増加した。石けんの調達量増加はクロストリジウム・ディフィシル感染症の、擦式アルコール消毒剤の調達量増加はMRSA菌血症の減少と関連していた。

香港の長期療養型施設における、多角的な手指衛生介入の効果:クラスター・ランダム化比較試験
Effectiveness of multifaceted hand hygiene interventions in long-term care facilities in Hong Kong:  A cluster-randomized controlled trial

著者
Ho ML, Seto WH, et al.
出典
Infect Control Hosp Epidemiol, 33(8): 761-767, 2012

キーワード:WHO、手指衛生、介入、遵守率、長期療養型施設

WHOが掲げる長期療養型施設の医療従事者に対する手指衛生推進のための多角的な戦略について、その効果を決定するべく、香港の老人ホームにおける手指衛生介入による遵守率の変化について評価している。
2009年11月~2010年7月の期間、香港にある18の老人ホームを無作為に2つの介入施設群と1つのコントロール施設群として割り当てて調査を行った。また、罹患率比の計算には、2007年~2010年の病名告知データを使用した。
介入ではWHOの多角的な戦略を採用した。介入施設群のすべての施設に提供したものは以下のとおりである:アルコール手指消毒剤(設置用および携帯用)、手指消毒剤用ホルダー、携帯用コードリール、手指衛生の必要な場面や適切な手技などを絵で表したポスター、手袋(介入施設群1には微量パウダー含有手袋、介入施設群2にはパウダーフリー手袋)、教育用資料。また手指衛生に関する講義・ビデオ視聴、直接観察調査実施時の迅速なフィードバックなどが行われた。なお、直接観察調査は訓練された看護師たちにより行われた。
直接観察では合計11,669の手指衛生機会が観察された。手指衛生遵守率について、コントロール施設群では19.5%から21.6%に推移したのみであった一方、介入施設群においては、介入施設群1では27.0%から60.6%、介入施設群2では22.2%から48.6%との向上が見られた。提供した手袋の種類による手指消毒剤使用に関する影響に大きな影響はなかった。また介入後は、呼吸器疾患のアウトブレイクやMRSA感染症(入院を要するもの)が減少した。
WHOの多角的な戦略に則った介入は効果的であることが認められた。

免責事項:本内容に関する文責はサラヤ株式会社にあります。

ICHE (Infection Control and Hospital Epidemiology)の文献を紹介することは、ICHEの編集者、the Society for Healthcare Epidemiology of America、the University of Chicago Pressがサラヤ株式会社の製品、サービス、業務内容を支持するということを意味するわけではありません。

【投書】職階層と手指衛生:医学生は院内感染を防ぐために発言するか?
Hierarchy and hand hygiene: Would medical students speak up to prevent hospital-acquired infection?

著者
Samuel R, Shuen A, et al.
出典
Infect Control Hosp Epidemiol, 33(8): 861-863, 2012

キーワード:手指衛生、院内感染、医学生、指摘、調査

手指衛生は医療関連感染(HAI)の減少において重要であり、手指衛生キャンペーンを実施しているにもかかわらず、手指衛生の遵守は低いままである。看護師、若手の医者および内科医が手指衛生を怠らなければ、遵守は改善する可能性がある。乏しい手指衛生慣習に対する医学生の同僚および医師に対する発言を評価している。 評価は、モナッシュ大学(オーストラリア)の医学生(209名)を対象に2012年1月23日から3月2日まで6週間実施された。学生が遠慮なく言えない主な理由は、先輩に疑問を投げかけるのは気が進まないからであった(対実習生:64%、対医師: 74%)。手を止めたくない(28%~12%)、ためらう(25%~9%)がこれに続いた。自分の言動が将来の仕事評価にどのように影響するかついて気にしている医学生は5%のみであった。
医学生は、自身が手指衛生の実施を喚起させることについて、医学生からは感謝されると考えていた(44%)が、その他の職員は快く思わなかったり腹を立てるだろうと考えていた(実習生37%、専門研修医51%、上級研修医65%、医師68%)。医学生の99%は、手指衛生がHAIの減少において非常に重要だと認識しており、不十分な手指衛生について医学生同士では進んで話し合うことがわかった。しかし、上の職階層に対して話し合う意欲をもつ医学生は少なかった。
医学生は医療チームの年少メンバーであるが、患者への悪影の減少に重要な役割を果たすと示された。患者ケアで最良の結果を得るためには、医療施設内の職階層的文化の改善に取り組まなければならない。

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直接観察による手指衛生のモニタリング:サンプリングはどのようにすべきか?
Monitoring hand hygiene via human observers: how should we be sampling?

著者
Fries J, Segre AM, et al.
出典
Infect Control Hosp Epidemiol, 33(7): 689-695, 2012

キーワード:手指衛生、モニタリング、遵守率調査、直接観察、観察方法

現在、手指衛生のモニタリングに関して、適切な観察数・観察場所・観察時間を示した手引きはほとんどない。そこで、観察者のスケジュール(観察場所・観察時間)が観察するイベント数や人数に対しどのような影響があるのかを調査している。
ICUにおいて2週間、自動センサーネットワークを設置し、医療従事者が病室に出入りする際を手指衛生の機会があったとみなし、33,721のタイムスタンプ(日時を示す情報)を記録した。医療従事者は6つの勤務カテゴリー(看護師・医師・クリティカルサポートのそれぞれ日勤・夜勤)に分類した。また、直接観察のために、ICUの建築図面を用いて観察者が立つべき位置を検討し、適切な4つの観察位置を決定した。観察時間は全体で60分とし、1つの位置ごとの観察時間を「1-15分」、「15-30分」、「30分」、「60分(移動なし)」として観察位置を移動していくという、観察者の異なる行動スケジュールにより手指衛生のモニタリングを行った。そして、自動センサーネットワークの記録と観察者から報告されたすべてのデータに基づいて、医療従事者の手指衛生のコンプライアンスを確率論的に算出した。
その結果、最も良い観察スケジュールは、「1-15分」の間隔で観察位置を移動するスケジュールであった。観察時間全体(60分)では、観察者は一日の平均手指衛生機会数の最大1.7%、最小で0.5%を観察できた。「1-15分」スケジュールで観察できたのは、平均として、「60分」スケジュールの場合より16%少ないイベント数であったが、人数は17%多く観察できた。また、平均標準偏差は「60分」スケジュールでは23%であったのに対し「1-15分」スケジュールでは17%で、「1-15分」スケジュールは最も良い推定量を出した。ICUにおいて観察者が頻繁に観察位置を変えることは、色々な職種やスタッフを観察できる優れた方法であることがわかった。
手指衛生のモニタリングは観察者のスケジュールに影響されるものであり、手指衛生の観察スケジュールはデータに基づいた調査方法を用いることの重要性が示唆された。

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Outbreak of Serratia marcescens in a neonatal intensive care unit:
contaminated unmedicated liquid soap and risk factors

著者
Buffet-Bataillon S, Rabier V, Bétrémieux P, Beuchée A, Bauer M, Pladys P, Le Gall E, Cormier M, Jolivet-Gougeon A
出典
J Hosp Infect, 72(1): 17-22, 2009

キーワード:乳児、セラチア、石けん、ディスペンサー、アウトブレイク、NICU

NICUの乳児5例から同一株のセラチア・マルセッセンス(以下、セラチア)が検出され、NICUの環境を調査している。その結果、5例中3例はセラチア汚染された石けんのある病室の患者だった。NICUのある1室に置かれた石けんボトルディスペンサーから同一株のセラチアが検出されたため全ディスペンサーをエアーレスタイプに換えたところ感染例は1例発生し、その後アルコールによる手指衛生を徹底したところ、セラチアのアウトブレイクはなくなった。

Impact of the amount of hand rub applied in hygienic hand disinfection on the reduction of microbial counts on hands.

著者
Goroncy-Bermes P, Koburger T, Meyer B
出典
J Hosp Infect, 74(3): 212-218, 2010

キーワード:手指消毒、必要最少量、手の大きさ、相関

2種類の擦式アルコール手指消毒剤を対象に、擦式アルコール手指消毒剤の必要最少量を調査研究している。調査の結果、手の大きさと使用量によって、殺菌効果が左右されることがわかった。なお、本研究に使用された擦式アルコール手指消毒剤は欧州標準化委員会(CEN)が定める欧州規格EN1500の基準を満たす製品である。

Hand washing soap as a source of neonatal Serratia marcescens outbreak

著者
Rabier V, Bataillon S, Jolivet-Gougeon A, Chapplain JM, Beuchée A, Bétrémieux P
出典
Acta Paediatr, 97(10): 1381-1385, 2008

キーワード:セラチア、石けん、細菌、汚染、ボトル

NICUで9例のセラチア・マルセッセンス院内感染が発生し、患者より分離された細菌および非抗菌石けん液の細菌汚染を分析している。その結果、セラチア・マルセッセンス(以下、セラチア)院内感染の9例中7例が同一株によるものであり、セラチアが存在する可能性のある場所にあった非抗菌石けん液のボトルからも院内感染例と同一のセラチアが検出された。石けん液ボトルが感染源となった可能性が疑われた。

Environmental surface cleanliness and the potential for contamination during handwashing

著者
Griffith CJ, Malik R, Cooper RA, Looker N, Michaels B
出典
Am J Infect Control, 31(2): 93-96, 2003

キーワード:石けん、ディスペンサー、ペーパータオル、カラン、好気性細菌、ブドウ球菌、残存物残留量、ATP法

医療施設の水道カランのハンドル部分、液体石けんディスペンサーおよびペーパータオルディスペンサー表面の有機物残留量と細菌数を調査している。その結果、どの環境表面も有機物と細菌で汚染されていた。特に水道カランのハンドル部分の汚染頻度が高かった。ディスペンサーは水道カランに比べると汚染頻度は低かったが、それでも約20%が汚染されていた。ペーパータオルディスペンサーは手洗い後に触れる機会が多く、病原体伝播に関与する可能性がある。

非薬用液体石けん液の汚染が関係したセラチア・マルセッセンスによる院内感染
Nosocomial Serratia marcescens infections associated with extrinsic contamination of a liquid nonmedicated soap

著者
Sartor C, Jacomo V, Duvivier C, Tissot-Dupont H, Sambuc R, Drancourt M
出典
Infect Control Hosp Epidemiol, 21(3): 196-199, 2000

キーワード:セラチア・マルセッセンス、院内感染、医療従事者、手指汚染、石けん汚染

セラチア・マルセッセンス院内感染と汚染された非薬用液体石けん液の関連を調べるために、セラチア・マルセッセンス院内感染が発生した部門と発生しなかった部門において石けん液や石けん液ボトルポンプについて細菌培養を行っている。また、医療従事者の手洗い前後の手指の細菌培養も行っている。
65個の液体石けんおよび液体石けんボトルポンプ(うち42個は院内感染発生部内のもの)の細菌培養を行った。その結果、液体石けん10検体(15%)、ポンプ9検体(14%)からセラチア・マルセッセンスが分離され、そのうち液体石けん8検体、ポンプ8検体は院内感染が発生した部門のものであった。さらに、63名の医療従事者を対象に手洗い後の手指の細菌培養を行なった結果、15名(24%)からセラチア・マルセッセンスが分離された。手洗い後の手指汚染の危険性は、液体石けんが汚染されていた場合は汚染されていない場合の3.5倍(P=0.11)、ポンプが汚染されていた場合は汚染されていない場合の54倍(P<0.001)であった。ボトルポンプ汚染とセラチア・マルセッセンス院内感染は有意に関連性を認めた(p=0.006)。また、石けん液汚染とセラチア・マルセッセンス院内感染についても有意ではないものの関連性が示唆された。
非薬用液体石けん液の汚染により医療従事者の手指を介したセラチア・マルセッセンス伝播につながったことが示唆された。このことより非薬用液体石けんの適切な使用と、アルコール手指消毒の励行が推奨される。

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Hand-rubbing with an aqueous alcoholic solution vs traditional surgical hand-scrubbing and 30-day surgical site infection rates
A randomized equivalence study

著者
Parienti JJ, Thibon P, Heller R, Le Roux Y, von Theobald P, Bensadoun H, Bouvet A, Lemarchand F, Le Countour X.
出典
JAMA, 288(6): 722-727, 2002

キーワード:ラビング、スクラブ、SSI、手術部位感

本研究では、スクラビング法とラビング法による手術時手指消毒の方法と、SSIの発生率等について比較検討している。本研究はフランスの6病院で16ヶ月間にわたり調査された無作為化クロスオーバー試験であり、手術後30日のSSI発生率と外科チームの手指消毒に関する許容度と遵守率を評価したものである。検討の結果、非抗菌性石けん使用後にアルコールを用いるラビング法は、抗菌性石けんによるスクラビング法の安全な代替手法であるといえる。

1%クロロキシレノール配合石けんの汚染に関連したセラチア・マルセッセンスのアウトブレイク
Serratia marcescens outbreak associated with extrinsic contamination of 1% chlorxylenol soap

著者
Archibald LK, Corl A, Shah B, Schulte M, Arduino MJ, Aguero S, et al
出典
Infect Control Hosp Epidemiol, 18(10): 704-709, 1997

キーワード:小児、セラチア、院内感染、CDC、クロロキシレノール、石けん、携帯、アウトブレイク、NICU、ディスペンサー、足踏みポンプ

1994年8月~1995年10月の間に、NICUで32名の小児患者にセラチア・マルセッセンス院内感染が起こった施設において、CDC(Centers for Disease Control and Prevention:米国疾病管理予防センター)による調査(医療従事者が使用している石けん液や手洗いおよび手洗い環境の調査・細菌培養)を行っている。
1995年1月~7月の間、医療従事者はクロロキシレノール(殺菌剤)入りの石けん液ボトルを個人携帯していた。個人携帯ボトルには石けん液を親ボトルから分注していた。この個人携帯ボトルの石けん液52検体中16検体(31%)からセラチア・マルセッセンスが検出された。洗い場からもセラチア・マルセッセンスが検出された(1箇所/13箇所)。患者、石けんの個人携帯ボトル、洗い場から検出されたセラチア・マルセッセンスのパルスフィールドゲル電気泳動によるDNAバンドパターンは同一であった。医療従事者の手指からはセラチア・マルセッセンスは検出されなかった。
以上のことより、セラチア・マルセッセンスで汚染された石けん液が院内感染アウトブレイクの一因となったと推察された。CDCは、NICU患者の処置前と処置後に手洗いを励行すること、個別石けん液ボトル携帯の廃止、壁付けディスペンサーから足踏みポンプの石けん液供給タイプへの変更を勧めた。

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Washing with contaminated bar soap is unlikely to transfer bacteria

著者
Heinze JE, Yackovich F
出典
Epidemiol Infect, 101(1): 135-142, 1988

キーワード:固形石けん、細菌、汚染、移行

抗菌剤含有固形石けんと抗菌剤を含まない固形石けんを細菌で汚染させ、その汚染石けんで手洗いした後、手指に汚染細菌が移行するかどうかを調べている。対象はボランティア16人で、汚染石けんによる手洗い後の手指の細菌を採取した。その結果、いずれのボランティアの手指からも菌は検出されなかった。以上の結果から、汚染した固形石けんで手洗いした場合でも汚染菌が手指に移行することはほとんどないことが示唆された。

Removal of nosocomial pathogens from the contaminated glove. Implications for glove reuse and handwashing.

著者
Doebbeling BN, Pfaller MA, Houston AK, Wenzel RP.
出典
Annals of Internal Medicine, 109(5): 394-398, 1988

キーワード:手袋、手指衛生、手洗い、消毒、着用後

本研究では、装着した手袋の上から病原菌を植菌し、3つの異なる手指衛生剤を用いてそれぞれの汚染除去効果を評価している。用いた手指衛生剤は薬用石けん、60%イソプロパノール、4%クロルヘキシジングルコン酸塩であり、手指衛生剤の組み合わせでばらつきはあるものの手袋に付着した微生物は完全に除去できず、手袋を外した後の手指からも菌が検出された。手袋を脱いだ後も手指衛生することが推奨される。

Microbial flora of in-use soap products

著者
McBride ME
出典
Applied and Environmental Microbiology, 48(2): 338-341, 1984

キーワード:固形石けん、液体石けん、ディスペンサー、汚染、トイレ

トイレ等で使用中の固形および液体石けんと、液体石けんのディスペンサー表面の細菌汚細菌汚染を調査している。その結果、固形石けんの92~96%から、液体石けんの8%から細菌が分離された。固形石けんから分離された細菌数は液体石けんより有意に多かった。また、液体石けんのディスペンサー外側表面からは2.0~4.0logCFUの細菌が分離された。

Serratia marcescens contamination of antiseptic soap containing triclosan :
implications for nosocomial infection

著者
Barry MA, Crave DE, Goularte TA, Lichtenberg DA
出典
Infect Control, 5(9): 427-430, 1984

キーワード:石けん、抗菌剤、セラチア、緑膿菌、汚染、ICU

外科ICUの1%トリクロサン含有石けん液の抗菌活性を調査している。その結果石けん液ボトルのいくつかが、セラチア・マルセッセンス(以下、セラチア)により外因性汚染を受けていた。汚染した石けんによる院内感染は認めなかったが、本ICUではセラチア感染が散発的に起こっており、汚染源が特定されないままであった。この石けんの抗菌活性を調べた結果、セラチアと緑膿菌にはほとんど活性を示さなかった。

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