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3.ノータッチ式ディスペンサーの有用性

手洗い剤や手指消毒用アルコール製剤を吐出するためのディスペンサーには、様々な形状のものがあります。例えば、ポンプを手で押すディスペンサー、肘や足など手以外の部分で押すディスペンサー、センサーに手をかざすだけで薬液が吐出されるノータッチ式ディスペンサーがあります。手指が直接触れるディスペンサーについては、ディスペンサー表面の微生物汚染が報告されています1)、2)。ディスペンサー表面から手指に移行した微生物の多くは手洗いや手指消毒の工程で殺菌・除菌が可能と考えられますが、ディスペンサー表面の微生物汚染が原因で医療関連感染が発生したという報告があります3)、4)。そのため、手洗い剤や手指消毒用アルコール製剤は、汚染されたディスペンサーを介した交差汚染を回避するために、手指を触れなくてもよいノータッチ式ディスペンサーの使用が理想と考えられます。また、ノータッチ式にすることでディスペンサーの微生物汚染そのものも回避することが可能なため、交差汚染のリスクを最小限にすることが可能であると考えられます。

表 各種ディスペンサーの特徴
  手押し式 肘押し、足踏み式 ノータッチ式
長所
  • ポンプ式のものは設置が簡便
  • 手指がディスペンサーに触れないため、手指を介した交差汚染のリスクを低減することができる
  • ディスペンサー本体に触れないため、交差汚染のリスクを低減することができる
短所
  • ポンプ部分やディスペンサー周辺の衛生管理が必要
  • 専用ディスペンサーの設置が必要
  • レバーやペダル部分の衛生管理が必要
  • 専用ディスペンサーの設置が必要
  • 自動吐出のための電源や電池交換が必要
交差汚染
リスク

参考文献

  1. McBride ME:Microbial Flora of In-Use Soap Products(使用中の石けん製品に存在する細菌).Applied and Environmental Microbiology,48(2):338-341,1984
    2種類の固形石けん(各25個)と2種類の液体石けん(各25個)を1週間にわたり異なる5箇所に設置し細菌汚染について調査した。また、液体石けんのディスペンサー表面の細菌汚染についても調査した。その結果、固形石けんでは、それぞれ25個中23個(92%)、25個中24個(96%)から細菌が分離され、液体石けん(2種類)では、ともに25個中2個(8%)から細菌が分離された。固形石けんから分離された細菌数は液体石けんより有意に多かった。分離された細菌の菌種は黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌属が最も多かった。固形石けんから黄色ブドウ球菌が分離されたが液体石けんからは分離されなかった。また、液体石けんディスペンサー外側表面から2.0~4.0 logCFUの細菌が分離され、多くは黄色ブドウ球菌以外のブドウ球菌属であったが、黄色ブドウ球菌も2回分離された。
  2. Griffith CJ, Malik R, Cooper RA, et al:Environmental Surface Cleanliness and the Potential for Contamination During Handwashing(環境表面の清潔さおよび手洗い中の汚染の可能性).Am J Infect Control,31(2):93-96,2003
    4つの医療施設620箇所の水道カランのハンドル部分、液体石けんディスペンサー表面、ペーパータオルディスペンサー表面の細菌汚染状況について、有機物残留量(ATP法)、好気性菌およびブドウ球菌の菌数を調べた。調査の結果、どの環境表面においても有機物、好気性細菌およびブドウ球菌で汚染されており、特に水道カランのハンドル部分の有機物残留量は、液体石けんディスペンサー表面やペーパータオルディスペンサー表面よりも多かった。好気性細菌およびブドウ球菌の菌数についても、水道カランのハンドル部分は、液体石けんディスペンサー表面やペーパータオルディスペンサー表面に比べて多かった。液体石けんディスペンサーとペーパータオルディスペンサーは水道カランに比べると微生物汚染の頻度が低かったが、それでも約20%のディスペンサーが汚染されていた。特に、ペーパータオルディスペンサーは手洗い過程の最後に触れる機会が多く、分離された微生物の多くがブドウ球菌であることからも、微生物の交差汚染と病原微生物拡散に関与する可能性がある。
  3. Sartor C, Jacomo V, Duvivier C, et al:Nosocomial Serratia marcescens Infections Associated With Extrinsic Contamination of A Liquid Nonmedicated Soap(非抗菌性液体石けんの汚染が関係したセラチア・マルセッセンスによる院内感染).Infect Control Hosp Epidemiol,21(3):196-199,2000
    Serratia marcescensS. marcescens)院内感染アウトブレイクと非抗菌性液体石けんの細菌汚染の関連性を調べるために、S. marcescens院内感染が発生した部門と発生しなかった部門において、65個の液体石けんおよび液体石けんボトルポンプ(うち42個は院内感染発生部内のもの)の細菌培養を行った。その結果、液体石けん10検体(15%)、ポンプ9検体(14%)からS. marcescensが分離され、そのうち液体石けん8検体、ポンプ8検体は院内感染が発生した部門のものであった。さらに、63名の医療従事者を対象に手洗い後の手指の細菌培養を行なった結果、15名(24%)からS. marcescensが分離された。手洗い後の手指汚染の危険性は、液体石けんが汚染されていた場合は汚染されていない場合の3.5倍、ポンプが汚染されていた場合は汚染されていない場合より54倍高いという結果であった。ポンプ汚染とS. marcescens院内感染は有意に関連性を認め、液体石けん汚染とS. marcescens院内感染については関連性が高くないと示唆された。
  4. Buffet-Bataillon S, Rabier V, Betremieux P, et al :Outbreak of Serratia marcescens in a neonatal Intensive Care Unit: Contaminated Unmedicated Liquid Soap and Risk Factors.(NICUにおけるセラチア・マルセッセンスの院内感染アウトブレーク:汚染した非抗菌性液体石けんとリスク因子).J Hosp Infec,72:17-22,2009
    2006年6月からの3ヶ月間に、5名の乳児の気管吸引物および消化器内容物から、同一株のSerratia marcescensS. marcescens)が分離された。NICUの環境を調べた結果、10室ある病室の1室に置いてあった非抗菌性液体石けんディスペンサーから同一株のS. marcescensが分離された。そこでディスペンサーをすべてエアーレスタイプ(空気が入らないタイプ)のものに置き換えたところアウトブレイクは終息した。リスク因子調査の結果、S. marcescensで汚染された非抗菌性液体石けんのディスペンサーがアウトブレイクに関与していたと考えられた。
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